年を重ねてきて、「最近、筋力が弱ってきたような気がする」「歩くのがしんどくなってきた」「出かけることが面倒になってきた」と感じることがありませんか?それは筋力低下の原因です。筋肉量は20代がピークとなり、だんだんと減っていきます。驚くべきことに、60才を境に急激に低下すると言われています。
それでもあきらめないでください。私は普段、高齢者施設でリハビリを提供していますが、80代~90代の高齢の方でも、筋力が向上していると実感したことがよくあります。年を重ねても、筋トレを行うことで十分に高まる可能性があります。
高齢者の筋トレに大事なこととは?
ずばり、結論から申し上げましょう!
「細く長く運動を続けられること」
この一言に尽きます。なぜなら、年齢的にも筋力が低下していくことは避けられません。しかし、何らかのきっかけで「運動ができなくなる」もしくは「寝ている時間が長くなる」と、あっという間に筋力が低下していくのです。この何らかのきっかけというのが、やり過ぎて転んでしまった、疲れて動けなくなったというのも理由に含まれます。
私の知り合いにも、運動のためにバドミントンをしてたら、尻もちをついてしまいました。結局、腰の圧迫骨折を患い、さらに動けなくなってしまったという悲しいことがありました。
筋トレの頻度はどれぐらい?
一般的に筋トレは、週2~3日がいいと言われています。筋力が向上していく過程に「筋トレによる筋肉の損傷」と「筋肉の損傷からの回復」のこの2点が必須です。筋肉の損傷からの回復に必要な時間が、ある程度時間が必要なのです。
継続できるのであれば、週2~3日でも構いません。しかし、多くの人は「細く長く運動続ける」ことが難しいでしょう。運動を続けるには習慣化が必要です。そのためには、毎日でも運動することが大事です。
負荷を小さくすれば、毎日やっても差し支えはありませんし、どうしても筋トレ効果を出したいという人は、運動の内容を毎日変えていくことで対応できます。
高齢者におすすめ筋トレ5選!
筋トレといっても筋肉が多く、どこから手を付けたらいいかわからないものです。高齢者にぜひともやってほしい筋トレをご紹介します。
下半身を鍛えることで、腰や膝の痛みを予防し、立つ・歩くことが楽になることを目的としたメニューを選びました。
筋トレでは絶対に無理をしないでください!
ちょっと余力を残しておくぐらいが、ちょうどいいです。
細く長く運動を続けていきましょう。
①スクワット
手すりにつかまり、腰をおとします。※腰をおとしたときに、膝がつま先より出ないようにしましょう。
スクワットは、お尻や太ももの筋肉を鍛えます。歩くのはもちろんのこと、立ち上がりが楽になりますよ。


②背筋
タオルを持ち、胸を張ります。※肩が痛くなる人は中止しましょう。
背筋を鍛えると、姿勢が良くなります。姿勢が良くなることで、立つとき、歩くときのバランスが整いやすくなり、転倒予防につながります。


③つま先上げ
手すりにつかまり、つま先立ちをします。このとき、体が上に引っ張られるように背伸びをするイメージで行いましょう。
つま先立ちは、ふくらはぎの筋肉を鍛えます。ふくらはぎは血液循環の要であり、むくみ予防ができます。


④かかと上げ
③と逆につま先を上げます。※体を後ろにそらせないようにしましょう。
つま先をあげることにより、歩くときにつまづきにくくなります。


⑤内もも
椅子に座り、膝と膝の間にタオルや枕を挟み、つぶすように内ももに力を入れていきます。
挟むものは、少し厚めの方がやりやすいですよ。(この写真は、枕を二つ折りにしているため、だいぶ厚くなっています)

内ももを鍛えることにより、骨盤が整い、O脚の悪化防止につながります。O脚はひざ痛の元です。膝の痛み予防になります。
運動よりも忘れないでほしいこと
運動よりも大事であり、見落とされがちな2点をご紹介しましょう。この2点をおろそかにすると、筋力アップが見込めないばかりか、筋肉を分解してしまい、筋力が低下する恐れがあります。
タンパク質をとること
筋肉を作る材料となる「タンパク質」をとることが重要です。現代人はタンパク質が不足していると言われています。理由として、コンビニや外食などで麺類・どんぶり類などで済ませてしまうことが多く、炭水化物が多く、タンパク質が少なくなりがちです。
タンパク質は筋肉だけに作用するわけでもありません。体を作る材料となっているので、血管を強くしたり、髪の毛や皮膚なども作ります。健康維持のためにもタンパク質を摂ることは重要です。
それでは、タンパク質は1日にどれぐらい必要なのでしょうか?タンパク質は、女性は50g、男性は60g必要とされています。
一般的な食事にどれぐらいタンパク質があるのでしょうか?一部をご紹介します。
(一食当たり)
鶏もも肉皮付き・・・約17g
鶏むね肉・・・約23g
豚もも肉薄切り・・・
卵1コ・・・約7g
納豆1パック・・・約8g
木綿豆腐1/4丁・・・約5g
鮭・・・約18g
朝昼晩と毎食タンパク質を摂るように意識すると、1日に必要な量のタンパク質の確保が可能です。
水分をとること
筋トレをするにも、水分は非常に大事です。タンパク質をしっかりとっていたとしても、水分が足りないと、栄養素が筋肉に届かないからです。また水分が不足すると、筋肉の柔軟性が低下し、けがの原因となります。
もし、筋トレの効果を十分に出したいときは、タンパク質と水分は十分意識しましょう。
注意点
痛みに注意
筋力低下を意識するときは、体のどこかに痛みを抱えていることも少なくありません。痛みは体の悲鳴です。痛みがある時は、かかりつけ医の先生に相談し、正しい運動方法ややってはいけないことを十分に確認しましょう。
運動中に痛みが生じた際は、即座に中止し、様子を見ましょう。
回数よりも正しい方法にこだわって
筋トレを始めると、気持ちの焦りから「回数多くやった方がいいのではないか」となることがあります。筋トレの効果はすぐに出るものではありません。一番大前提の「細く長く運動を続けらえること」を考えると、最初は10回からでも継続すれば十分に効果を発揮します。運動を継続できるようになれば、あとは回数を増やせばいいだけですから。
それよりも正しい方法にこだわりましょう。間違った運動方法をしてしまうと、腰や膝を傷める原因となります。
年を重ねても筋力の維持・向上できる!
しっかり水分とタンパク質をとり、継続的に運動することで、年を重ねても筋力の維持・向上が可能です。もし、筋力の低下や今後の寝たきりが心配な方は、今からでも遅くありません。10回何かの運動をやってみましょう。